2014年1月29日水曜日

アイヌ遺骨問題の議論を封じる?文科省の調査結果の推進会議への報告


20111124日付で文部科学省は各大学等に対して「アイヌの人々の人骨の保管状況の調査について」を指示して調査を実施しました。その調査結果は2012年末までに文科省に届けられています。しかし、各大学の回答である「調査票」は一般には公開されず、アイヌ政策推進会議にも9ヶ月に渡って一切公開されてきませんでした。一部公開が決定されたのは、昨年328日に私たちの京大への取り組みで文科省が公開を決定したときでした。(ブログ参考)同日、北大も報告書を公開しましたが、調査票にある副葬品の項目などは削除されたものでした。
●今回、昨年11月に文科省とのやりとりを行い、その上で情報公開の手続きをとりアイヌ遺骨を保管している11大学、そして九州大学の12大学からの調査票並びに文科省に設置された「大学等におけるアイヌの人々の人骨保管状況の調査結果取りまとめに関する意見交換会」の資料が公開されました。
この「意見交換会」は「調査結果の整理及び公表にむけたとりまとめ」を行うために設置されましたが、委員は加藤忠(北海道アイヌ協会理事長)、佐藤幸雄(同主任)、常本照樹(北大アイヌ・先住民研究センター長)、金澤英作(日本大学名誉教授)、中橋孝博(九州大学名誉教授)、内閣官房アイヌ総合政策室、文科省高等教育局高等教育企画課長、文科省研究振興局学術機関課長で構成されています。
この意見交換会は昨年4月・6月の2回の会議の結果、昨年911日の第5回アイヌ政策推進会議に平成256月付「大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況の調査結果(概要)」(A4版・2P)が提出されました。推進会議の委員に調査結果が公表されたのはこれのみです。
 ところが資料を見ていただくとわかりますが、昨年6月の第2回意見交換会には、同タイトルで「会議後回収」と明記された「調査結果」が2種類(A42枚とA45枚!)用意されており、なんと調査結果の内訳等がより具体的に認識できる「調査結果」が没にされて、内容のおおまかな「調査結果」が推進会議に提出されました。一体全体どうなっているのか。遺骨の調査であることの趣旨を踏まえて、なぜ、そのような選択が行われたかまったく理解できませんし、合理的な理由はみつけられません。みなさんはいかがでしょうか?アイヌ遺骨問題の議論の活発化や調査結果をできるだけ具体的に知らせない意図があるのではと疑うのはうがった見方でしょうか。アイヌ政策推進会議の委員でもある同会議を仕切る委員には聞いてみたいものです。
●しかし、まだアイヌ遺骨があると報告されながら公開されていない調査票があります。推測ではアイヌ遺骨問題に関する文科省のガイドラインでどのように扱うかさらに検討が必要な事情のある遺骨に関する調査票だと考えられます。あるいは新たな大学か?いずれにせよ、ずさんな遺骨管理の結果であることが想像できます。
●「アイヌ人骨はない」と回答した九州大学の調査票の公開を求めたのは、九州大学には北大医学部で児玉教授の前任者であった平光教授が転任しましたが、その際に解剖中のアイヌの遺体5体を九州大学にもってゆき、弟子も含めて約20本の論文が発表されています。そうした事実があるにもかかわらず「無い」で済ますことのできる文科省の調査自体の根本的な問題が問い直されなくてはなりません。