日本の人類学会は、戦前において単一民族国家観を根拠づけるべく、社会進化論や形質人類学を動員して、アイヌ民族を近代化に適応できない優勝劣敗の生存競争に敗れた「滅びゆく民族」と貶(おとし)めてきました。そのために、時には官憲も動員してアイヌ民族の墳墓を荒らし、「国策研究」としてその遺骨と副葬品を奪ってきました。そうした差別思想と遺骨の盗掘・収集という犯罪行為は、戦後においても引き継がれてきました。
報告書には「現在も数か所の大学等に研究資料等としてアイヌの人骨が保管されているが、それらの中には、発掘・収集時にアイヌの人々の意に関わらず収集されたものも含まれていると見られている」(16頁)と記述されています。その人骨とは遺骨であり、個々について「発掘・収集」のその歴史的犯罪の経緯を明らかにし、その犯罪の責任を徹底して追及し、謝罪と賠償が行われなくてはなりません。また、現在もそうした遺骨を研究材料として扱う、アイヌ民族の先祖の尊厳を踏みにじり侮辱する行為はただちに止めさせなければなりません。
現時点で、政府の把握している「数か所の大学等」を具体的に明らかにし、アイヌ民族の確認の下にその歴史的犯罪の真相を明らかにするべきだと考えます。また遺骨をそれぞれの故郷に返還して、その地に納骨堂を政府・当該大学の責任で建設し、謝罪、慰霊、賠償すべきだと思いますが、政府の見解を明らかにしてください。
(2009年8月12日 公開質問状より)
さらに詳しい声明文は、資料ページ内の③公開質問状、①決議並びに申し入れなどをご覧ください。
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