来る6月6日に「先住民族アイヌからのメッセージーアイヌモシリと首都圏を結んでPART2 」と銘打って、先住民族アイヌのカムイノミ、アイヌ古式舞踊公演などの伝承文化の披露とともに、アイヌ文化パネル・工芸展を開催します。今年のテーマは「ケウトム ピリカ(美しい心で) ウタラ アン(仲間・私達) テケ(手を) アンパロ(つなごう)」であり、アイヌ古式舞踊公演では中山千夏さん(作家)の司会で旭川・首都圏のアイヌ民族をパネラーとしてパネルディスカッションも行われます。またトンコリ演奏では国際的にも交流されているOKI DUB AINU BANDで活躍されている居壁太さんのトンコリの弾き語りも行われるなど多彩な文化が披露されます。
●根深いアイヌ民族差別
この間、「先住民族の権利に関する国連宣言」の採択、それを受けての国内での「アイヌ民族を先住民族として認めることを求める国会決議」、そして有識者懇談会やアイヌ政策推進会議の動きがあり、これまでになくアイヌ民族が報道でも取り上げられています。
しかし一方では、そうした動きに対して「なんでいまさら民族にこだわるの」「日本国籍をもって日本人と同じに扱われているからいいじゃないの」という無自覚な差別発言と私達は対面しています。
これは日本社会に巣くう根深い単一民族国家観に由来するものですが、その背景には戦後も同化政策を継続してきた政府の責任があり、私達が先住民族アイヌの歴史をきちんと理解しその声に耳を傾けることが阻まれてきたこと、また無自覚・無関心のままに自らそれを支えてきた痛苦な歴史があります。
●先住民族アイヌの存在を認め、その声に耳を傾けることから
私達はこうしたアイヌ民族差別に対面する中で、最も身近にある地方自治体(足立区)に「アイヌ民族の人権推進」を行政責任として行う事を求めてチャランケ(話し合い)を重ねてきましたが、区の認識を糾すとともに徐々に理解を引き出して人権推進指針にアイヌ民族の項目が挿入され、区との協力で地域の人々に広く呼びかける企画を重ねてきました。そうした中で、自治体もアイヌ民族の存在を自覚し、また地域の人々の作品展や古式舞踊公演に対する質問や声は、回を重ねるごとに理解の深りを実感できるようになってきました。
そうした成果で、昨年の「先住民族アイヌからのメッセージーアイヌモシリと首都圏を結んで」にはアイヌ古式舞踊公演・アイヌ文様刺繍作品展などに1つの市民団体としては希有な1700人に及ぶ人々が参加し溢れる共感が寄せられました。
●今年のテーマは「ケウトム ピリカ(美しい心で)」で手をつなごう!
こうした参加した人々のあふれる共感は、アイヌ民族のみなさんの声と先祖の累々たる犠牲の上で継承されてきたアイヌ文化のすばらしさに直接触れたことに由来します。
今回は、アイヌモシリのアイヌ文化保存会の中でも定評のあるチカップニアイヌ民族文化保存会の川村シンリツ・エオリパック・アイヌ(会長)さん、杉村フサ(副会長・伝承部長)さんと首都圏で活動されている星野工(東京アイヌ協会会長)さん、平田幸(レラの会・舞踊のリーダー)さんをパネラーとし、その司会を中山千夏(作家)さんが積極的に引き受けてくださり、継承されてきた民族の心(ケウトム・ピリカ)、その歴史と民族性を伝えていただき交流したいと思います。
●先住民族の権利回復を!
現在、アイヌ政策の見直しが行われていますが、政府はいまだにアイヌ民族を国連宣言にある先住民族(権利主体)として認めず、今年3月の国連・人種差別撤廃委員会では日本政府に対して「もっと多数のアイヌ民族と対等な立場で協議すること。国連宣言の全項目を対象としてアイヌ政策の見直しを行う事。」を勧告しました。
これは私達が取り組んでいる「先住民族アイヌの権利回復署名」で求めていることと同じ主旨です。先住民族アイヌの権利回復は、政府がアイヌ民族の存在(歴史)をきちんと認め、その声に耳を傾ける姿勢に立つことがなければ確立することはなく、同勧告はそのことを指摘しています。この政策の見直しの結果は、今後少なくとも一世代・30年間はアイヌ民族を拘束することになるでしょう。
今回の企画も、参加者にアイヌ民族の声に耳を傾けて頂き、アイヌ文化を満喫し直接交流していただくことでその理解を深めていただくことが目的ですが、先住民族アイヌの声を受け止める一助となればと思います。私達は日本人自身が正しい歴史認識を取り戻す中ではじめて、アイヌ民族と対等・平等で人間的な信頼関係が築けることを確信してきました。アイヌ民族のみなさんに協力していただいたこの企画を広く地域の人々に案内すべく、みなさまに案内をお願いする次第です。よろしくお願い致します。